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キリンとサントリーの統合交渉、FA選定は混戦模様に

キリンとサントリーの統合交渉、FA選定は混戦模様に

2009年 07月 14日 16:29 JST

 [東京 14日 ロイター] キリンホールディングス(2503.T: 株価, ニュース, レポート)とサントリーホールディングス大阪府大阪市)が経営統合を検討していることが13日明らかになったことで、ファイナンシャル・アドバイザー(FA)の選定をめぐる証券会社の動きがあわただしくなりそうだ。

 両社が過去5年間に行った合併・買収(M&A)をみると、FAの使い方は特定の証券会社に集中せず、案件ごとに選定する姿がうかがえる。それだけに1兆円を超える可能性のある今回の案件のFAの座をめぐっては、幅広い証券会社に門戸が開かれていると言え、激しい争奪戦が繰り広げられそうだ。

 両社の統合検討の報道を受け、証券会社のM&A担当者の間では「FAはどこ」、FA選定のための「ビューティーコンテストはいつ開催されるのか」などの思惑が駆け巡った。両社が経営統合で合意すれば、金額は1兆円を超える大型案件となる可能性があり、FAに選定されるか否かが、2009年のM&Aリーグテーブルの順位を大きく左右するためだ。

 両社と距離が近いとされる三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T: 株価, ニュース, レポート)の関係者は13日、キリンからもサントリーからも連絡を受けていなかったと、両社のトップ主導で進んだ話に驚きをみせた。同日朝、自社のM&A担当者に対してFA起用に向け「適切に対応するよう指示を出した」と話した。

 あるM&A担当者は、キリンが株式を上場している一方でサントリーは非上場という違いのほか、キリンがグループの中に上場子会社を抱えること、また、両社の事業が多岐に広がっていることも、ディールの複雑さを示すと指摘。「何十年かに一度の話なので政治的にも多くの人が動き、FA選定も教科書通りにいかないのではないか」と警戒する。

 キリンとサントリーはこれまでM&A資本提携を含む)を行う際、どのような証券会社をFAに使ってきたのか──。トムソン・ロイターによると、キリンの過去5年のM&Aで最大の事例となる豪ライオンネイサンの買収では、JPモルガン(JPM.N: 株価, 企業情報, レポート)とドイチェバンク(DBKGn.DE: 株価, 企業情報, レポート)をFAに起用した。フィリピンのビール大手サンミゲル買収では、野村証券を採用。協和発酵の買収では、JPモルガンと日興シティグループ証券がFAとなった。

 キリンの広報担当者はFAの選定基準について「臨機応変にいろいろなところを使う」と話し、特定の証券会社に依存するのを避けている。キリンは社内にM&Aを担当する専門の部署を持っており、案件を自力で手掛けたうえで「(FAに)仕上げを手伝ってもらったり、最後にアドバイスしてもらったりするケースも多い」(広報担当者)という。

 サントリーもFAとの付き合い方は、全方位外交の姿勢だ。仏ダノン(DANO.PA: 株価, 企業情報, レポート)からニュージーランドの飲料大手フルコアを買収した際はモルガン・スタンレーを採用。タイの飲料メーカー、ティプコF&Bに出資した際のFAは大和証券SMBCと、ケースバイケースだった。

 有価証券報告書によると、キリンの外国人持ち株比率は08年12月末時点で21%。米国の株主の保有割合が10%を超える企業は、日本の企業同士の合併や経営統合でも、米証券法上の開示義務が生じる。新日鉱ホールディングス(5016.T: 株価, ニュース, レポート)と新日本石油(5001.T: 株価, ニュース, レポート)の経営統合が09年9月から2010年4月に延期となったのも、こうした基準に沿って財務諸表の作成やSEC基準の開示をする必要があるためだが「こうしたノウハウを持つFAはそう多くない」とも言われる。

 どのようなFAを採用するかは、世界の食品ビジネスで欧米の巨大企業と競争できる企業体を作ろうとするキリンとサントリーにとっても、重要な決断となりそうだ。

 世界的な景気後退を背景に経営者はコーポレートアクション(企業行動)に対して慎重な姿勢を取っており、M&Aは減少傾向にある。トムソン・ロイターによると、09年1─6月期に公表された日本企業のM&Aで最大なのは、三井住友フィナンシャルグループ(8316.T: 株価, ニュース, レポート)の日興コーディアル証券の買収で、金額は約5700億円。キリンとサントリーが統合で合意すれば「1兆円を上回る今年最大のディールになるのは間違いない」(大手証券)との見方が有力だ。

 日本企業のM&Aで1兆円を超える案件は少ない。07年で最大の案件となった米シティグループ(C.N: 株価, 企業情報, レポート)の日興コーディアルグループ買収は約8000億円と1兆円に届かず、08年に完了した案件では三菱UFJの米モルガン・スタンレー(MS.N: 株価, 企業情報, レポート)出資(約9000億)が最大だった。08年に公表されたものの完了していない案件では、パナソニック(6752.T: 株価, ニュース, レポート)の三洋電機(6764.T: 株価, ニュース, レポート)買収(約9900億)がある。

 このほか過去に大型案件として目立ったのは、05年の三菱東京フィナンシャルグループによるUFJホールディングス買収で約4兆3700億円、06年のソフトバンク(9984.T: 株価, ニュース, レポート)のボーダフォン買収が約2兆0320億円だった。

(ロイターニュース 清水 律子、江本 恵美;編集 田巻 一彦)